第4章 その5:「AC療法2クール目」
やっと副作用も落ち着いて過ごしやすい日々が戻って来たというのに、あっという間に2回目の投与日がやってきた。
抗がん剤を投与したらしばらく食事を楽しめなくなるので、投与前のある晩、景気づけに夫と外食した。免疫力が回復した後の食欲はすごい。
まともなものを口にできなかった数日間を体が取り戻そうとしているみたい。なぜか歯ごたえのある生野菜をたくさん食べたくなるのがふしぎだった。
2015年6月30日。AC療法2クール目のスタート。
病院で採血の結果、白血球は、抗がん剤を投与しても大丈夫な数値を示していた。
尾田平先生からOKが出たので、その足で化学療法室へ向かう。
通院による投与2回目以降は、この化学療法室で点滴を行うことになっていた。とても明るい雰囲気に設えられた部屋だった。活けられたお花、テレビ付きのリクライニングの椅子。1ブースずつ、カーテンで仕切られていた。
患者の精神的なストレスをできるだけ軽減できるよう、配慮されているにちがいなかった。
でも、だからといって、これからまたあの副作用に苦しめられる期間を思うと、明るい気持ちにはなれない。はあ…。でも、頑張るしかない。
というか、頑張らずに、頑張ろう。
投与が始まると、前回と同様に「空気に溺れそうな感じ」「頭皮が剥けるようなビリビリする感じ」が始まった。
看護師さんが酸っぱい味のアメをくれた。空気に溺れそうな症状は、酸っぱいものを口に入れることで軽減されるらしい。
前もって聞いていたら、とびきり酸っぱいものを持参してきたのに…!
化学療法室には、専門の歯科衛生士さんが常にスタンバイしている。こまめに「おかしな感じはないですか?」と確認してくれた。
口内の副作用をできるかぎり最小限で抑えるためには、やはり早期発見が大切だということだ。口内炎など、口内の障害がとにかく痛くてつらいのは、身にしみてわかっている。私の場合はくちびる事件のこともあって、より慎重に対応していただいた。
私の歯並びや唇のかたちをくまなくチェックしたあと、先生は言った。
「歯の形に丸みがあったほうが、より安全に唇を治療できます。歯を削りましょう。」
自分の歯があたることでバイキンが感染するなんて。それだけ免疫力が下がっているということだ。まさか前歯を削ることになるとは…!本当にいろいろなことが起こるものだなあ、と思った。
こうして、2回目の投与日を終えた。
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