はじめに
このサイトを訪ねてくださり、ありがとうございます。これは、2015年5月以降、実際に私の身に起こった出来事です。2015年5月22日、私は乳がんと告知されました。そして今、私を見て、まさか乳がんだっただなんて思う人などいないでしょう。そのくらい、元気で健康です。自分ががんになって、初めて、この病気に苦しみ、不安におびやかされながら、毎日闘っている女性が世界中にたくさんいることを知りました。自分自身の体験をみなさまと共有することで、少しでもお役に立てたらと思い、筆をとった次第です。
2015年、私は人生のどん底でした。自他ともに認める「甘えん坊の末っ子」であるわたしにとって、世の中にあふれる「つらい時こそ、前を向いて進もう」というようなメッセージは強すぎて、正直、受け入れにくいものでした。ただひたすら、誰かがよしよしと頭をなでて、痛いの痛いのとんでけー、と言ってくれたら病気が治ってしまった!みたいな奇跡の魔法を、心のどこかで信じていました。(今でも信じているかもしれません。笑)
ほんとうにつらいとき、前向きな自分を演じて、無理をして笑っていなくてもいいのだと思います。もちろん心を整え、前向きになるのは素敵なことです。だけど、人にはそれぞれの対峙のかたちがある。十人十色のやり方で、誰かの精神的な支援を受けたり、自分に向き合えたりしたその先で、自然に笑えるようになるのを待ったっていいと私は思っています。
そんな、弱虫で、なんでも他力本願の私が、もうこれ以上の底はないはずと、一日一日を一生懸命に生きることで学んだ、当たり前の毎日の「貴重さ」。なかでも愛する人と過ごす時間の価値は、何物にも代えがたいものです。愛する人、というのは、自分とつながりのある全ての人、と言えるのかもしれません。主治医の先生、病院のスタッフの方々、家族、友人、親戚、恩師…、私は本当に多くの人に支えられて生きていることに改めて気づきました。
「一人じゃない。」
そう実感しながら生きることが、これほどまでに深い価値があるなんて、乳がんにならなければ気がつかなかったかもしれません。
だから、もし、これを読んでくださっているあなたが今、辛くて辛くてどうしようもなければ、わたしがあなたに言ってあげたい。そして、もし、これを読んでくださっているあなたの大切な家族や友人が、悲しみの涙にくれているのなら、言ってあげてほしい。
痛いの痛いの、とんでけー!
2016年8月20日
共著:平西 杏莉(私)
平西 麻依(姉)